Giant Steps
こんにちは。
先日、音楽工房ピーチジャム恒例の発表会がありました。
今回は都合のつかない生徒さんが結構おりまして、結構な少人数という少々寂しい発表会となってしまいました。
発表会は一年間どれだけ成長したか、嫌でもはっきりしてしまう場です。
今回も各々悲喜こもごもがありました。
私の場合は果たしてどちらだったか、まあそれはさておき。
生徒の発表が終わると、こちらも恒例の講師による演奏。
今や、講師先生のちゃんとした演奏が聴けるのはこの発表会の日しかなくなってしまったので、我々生徒たちにとってはとても貴重な時間なのです。
当然、講師二人もこの日に向けてしっかりと調整してきています。
とにかく毎年この日を楽しみにしているそうです。
それでもやはり生徒の模範にならなくてはならない為か少々緊張気味でもあります。
しかし、いざ演奏が始まると毎年恒例、我々を「別世界」へと誘ってくれるのです。
まずはピアノの玲子先生のペンによるオリジナル曲 "Manhattan"。
この曲はちょっと昔、バンド用に書かれた曲だと記憶しています。
でも今回はデュオ演奏です。
3拍子の難しいノリの曲ですが、何かリズム隊がいるのかと思ってしまうほど安定したリズムでグルーブしています。
コード進行は変形マイナーブルースといった感じで自由度が高いです。
そんな自由空間の中、ギターはまるで水を得た魚。
クロマティック泳法で泳ぎまくります。
そしてそれを受けピアノも静かにスタート。
歌うように、大切にメロディーを紡いでいきます。
コードを弾くと、それはまるで波紋のように美しく拡がっていきます。
ギタリストが嫉妬する瞬間ですね。
それにしても美しい曲です。
じっくりと聴いてみてください。
Manhattan - by Reiko Sasahara ~ 笹原孝之(g), 笹原玲子(p)
そして次は言わずと知れた "Giant Steps"。
コルトレーンの、いわゆる「コルトレーン・チェンジ」という進行を使った曲で、おそらくコルトレーン自身もその練習用のエチュードとして作ったらしいです。
この曲ができた当時としては本当にクエスチョンマークだらけの曲だったことでしょう。
実際音源を聴いてみるとコルトレーンのソロの後、トミー・フラナガンの迷いだらけのピアノソロが聴けます。
録音されたのが1959年。名ピアニストでさえ戸惑いを隠せない演奏になってしまうほど、当時としてはそれだけ画期的な曲だったのでしょう。
そしてそれから58年。
あれからどれくらいのプレイヤーがこの曲を演奏したことでしょう。
You Tubeなんかでも色々と聴く事ができますよね。
しかし、その中でもこの演奏はかなり上位、いやもうナンバーワンと言っても過言ではありません。
一言で言って、いわゆる「学習臭さ」が全くないのです。
基本的にこの曲を演奏する場合、テンポが速くなるとコードの提示が大変になってくるのです。
そうなると大体のプレイヤーはペンタトニックや苦し紛れのバップフレーズに頼ってしまいがち。
ところが先生たちの演奏はそうはなりません。
本当に純粋な「歌」となって我々に届くのです。
お互いの位置を確かめ合うようなイントロからスタート。
あくまでも心の赴くまま歌って行きます。
慎重に大切に、時に攻撃的に、時にいたわるように。
そこにはフレーズもリックも無いのです。
そしてそれは途切れる事なく続きます。
まるで泉が湧き出るように・・・
Giant Steps - by John Coltrane ~ 笹原孝之(g), 笹原玲子(p)
最後は歌モノです。
ビリー・ジョエルの曲ですね。
ピアノの玲子先生が歌うのですがこれがまたイイんです。
先生の声はとてもしっとりしています。
そうですね、例えるならカントリーマアムくらい(笑)
いわゆる世間で言われているような女性的な声ではないのです。
ですからこういうしっとりとした曲調に合っているんです。
さらにピアノ演奏で培った完璧な音程とリズム。
申し分ないでしょう。
そしてそこに優しくフラメンコギターが寄り添います。
まさにエンディングに相応しいチューン。
ちょっと目を閉じて聴いてみてください。
And so it goes ~ 笹原孝之(g), 笹原玲子(p)
いかがでしたでしょうか?
私たちは良い先生に恵まれました。
全くありがたいことです。
しかし今回の"Giant Steps" 。
もしコルトレーンが生きていたらどう思ったんだろうか?
ちょっと考えてしまいました。
きっと生徒の皆さんにも良い刺激になったはずです。
また来年が楽しみです。
では。