Dead Musicians Society

日々の話や音楽工房ピーチジャムのことを綴っていきます

La La Land ~ ダンスと歌とJazzと夢、時々リアル、そしてネタバレ注意!

先日、話題の "La La Land" を観てきました。

今回のアカデミー賞、作品賞こそ逃しましたが最多6部門受賞したようですね。

久しぶり、おそらく「マンマ・ミーア」以来ミュージカル映画鑑賞。

しかしミュージカル映画と言っても、ありきたりの夢物語ではありません。

結構リアルな話を音楽で甘く味付けしているといった感じでしょうか。

多くの人は胸を締め付けられる思いをするかもしれません。

でも、とても前向きな良い映画ですね。

監督はデミアン・チャゼル。前作は「セッション」(原題 Whiplash) で、こちらもアカデミー賞3部門で受賞しています。

まだ観ていなかったので流れでこちらも観ました。

この映画も凄かった。

最後の最後まで騙されつづけます。

この2本を通して見ると、共通の思いが込められている感じがします。

一つはこの監督は相当ジャズが好きなんだなという感想。

そして "La La Land" ではジャズの将来を憂いている、そんな感じがしました。

この監督さんかなりの保守派だと思います。ジャズに関しては。

つまりモダンジャズ寄り。伝統を重んじる人なのかな。

ですから主人公のセブが聴いたり演奏したりする曲もそっち系がほとんどです。

映画の中でもそんな保守的シーンがそこかしこに。

中でも印象深かったのはピアノでフレーズをコピーする時にはテープやレコードを使っていたりするところ。

今ではパソコンに曲を取り入れたりしてコピーをするのが主流ですから。

テープを何度もキュルキュルっと巻き戻しでコピーするっていうのが妙に懐かしかった。

しかし現実は、そんな昔ながらのジャズを聴く人なんてもうあまりいないということを目の当たりにして、いつしか誘われるがままに今風な音楽を、仕事として嫌々ながらにも受け入れていってしまう、そんな流れからもこの監督のモダンジャズ時代への憧れを感じ取れました。

「セッション」ではもちろジャズを題材にしていました。

一流のドラマーを目指す主人公のアンドリューと鬼教師フレッチャーの不思議な関係性が描かれます。この映画、ある意味ミステリーです。でもそれはまたの機会に。

本人も、もともとドラムを勉強していたようで、そういったバックグラウンドが映画にも反映されているようですね。

そしてもうひとつ。

それは「夢」。

もうちょっとハードに「求道」とでも言ったらいいのかな?

道を極めることの難しさと素晴らしさ。

どちらの映画もそのあたりが共通点だと思います。

私が一番心打たれたのはエマ・ストーン演じるもう一人の主人公のミアがオーディションで切々と歌いあげるシーン。

自分が女優を目指す理由。

ミアは女優だった叔母の影響を受け、女優を目指したのだった。

しかし叔母は不遇な生涯を送った。

それを人は愚かだと罵った。

だからミアはこう歌った。

 

Here’s to the ones who dream!

夢を追う愚か者たちに乾杯!

  

夢を追う愚か者。

例えば、もういい歳なのにプロミュージシャンを目指してバイトをしている人。

売れもしない小説を書いている人。

全く理解できない絵を描いて道端で売っている人。

夜通しファミレスでネタを書いているお笑い芸人志望。

私たちは、どこかでそういった「夢追い人」たちを蔑んでいるのではないだろうか?

確かに、彼ら彼女らに多くの人は「もういい加減、現実を見ろ」と言うでしょう。

しかしどんな人でも多かれ少なかれ、夢を見ていた時代があったはず。

でも日々の生活に追われ、いつしか夢を諦めていってしまった。

もしかしたら、いつまでも夢を追っている者たちをやっかんでいるのかもしれない。

どこかでそういう生き方を羨ましく思っているだけなのかもしれない。

ミアはそんな我々に、素直に応援して欲しいと歌ったのかもしれない。

とても心に残る良いシーンだった。

そして映画の終盤。

そう、結局この二人は最終的に結ばれない。

何年かして有名女優になってミアは導かれるように、セブの出した店に夫と共に偶然入る。

席に着くと目の前にセブ。

セブも驚くが、すかさずピアノを弾き始める。

それは、二人が初めて出会った時弾いていた曲。

ここからセブのタラレバの妄想劇(?)が始まる。

その妄想の中で、ミアはトントン拍子に大女優になっていく。

セブはいつもミアのそばに。

そして二人は結婚し、家族になった。

しかしミアの夢は叶うのだがセブの夢はそこにはなかった。

曲が終わるとセブの妄想劇は終了。

セブの前にはミアと彼女の夫がいる。

それが現実。

ミアが店を出る時、振り返りセブを見てうなずく。

それに答えるセブ。

きっとお互い「これで良かったんだよ」と、心の中で言った気がしました。

なんとも切ないエンディング。

でも決してネガティブな別れではなく、明るい未来を予感させて締めくくります。

考えてみたら、もともとこの二人は、友人でも恋人でもなかったのかもしれない。

追う夢こそ違ったが、互いにその夢を叶える為に戦ってきた。

そう、言うなれば戦友。

二つ隣り合わせに並んだ道を、お互いの夢を応援しつつ共に歩いてきた。

そしてそこには本物の愛があった。

二人が出した答え。

それは相手を思うが故に身を引くという行為。

世の中では、最後には一緒に家族になってハッピーエンドという風潮が主流だが果たしてそうなのだろうか?

本当に相手のことを思う時、もしそこに自分の居場所がなかったり、自分がいることによって何か障害になるなんてことになったら、やはり自ら去るべきなのではないだろうか?

そしてそれは相手の夢の為、さらには自分の夢の実現の為でもあった。

セブの妄想にもあったが、どちらかが夢を諦めていたら二人は一緒になれたのかもしれない。

隣り合わせに並んでいた道は、その時から別の方向に離れて行ったのだった。

「私と仕事、どっちをとるの?」なんて無粋なセリフとは無縁の世界なのだ。

色々と書きましたが、そんな小難しい話は忘れて、純粋に楽しめる映画です。

 

最後に、この映画のメインテーマ曲 " Mia & Sebastian's Theme " なんですが、曲の盛り上がり方とかがショパンの「別れの曲」に似ていると思ってしまいました。

そうか、きっとこの二人の行く末を暗示して似せて作ったんだなと思ってしまったのですが、ショパンの「別れの曲」って日本で付けられたタイトルなんだそうですね。なので全く関係ないようなのですが、この曲の背景を調べてみたら1832年に作られたものらしく、なんとショパンがパリでデビューした時のものらしいのです。ここから有名なピアニストになっていったんでしょうね。

またここでも勘ぐってしまいました。

ミアもまた、パリでの映画の仕事をきっかけにスターになっていくからです。

これはひょっとして、やはりインスパイアされて作ったのかな?

ちょっと考えすぎかな。

とにかく、色々な角度で楽しめる映画だと思います。

そしてこの映画を観た後、ちょっとピアノが弾けたらいいなぁと思ってしまうでしょう。

では。

 

 

Ost: La La Land

Ost: La La Land